9月11日(金)セシオン杉並にて「『普通に死ぬ~いのちの自立~』映画上映会とフリートーク」を開催しました。残暑厳しい日でしたが、開場待ちが出るほど多くの方々にお越しいただきました! 感染症対策として定員を通常の5分の1以下としているために、定員オーバーで入場をお断りしなくてはならないかも…と気をもみましたが、満席ギリギリでなんとか全員に入場していただくことができました。
5年前、前作『普通に生きる』の自主上映会をみかんぐみメンバーで行ったときは、3~5歳の子どもたちと一緒に観ました。でも、今回はあえて子どもたちが学校に行っている時間帯に上映会を行い、親だけで参加できるようにしました。親なき後の状況がストレートに出てくるであろう映画を子どもと一緒に観て、平静でいられるか、ちょっと自信がなかったからです。
実際に映画を観ると、全てが自分たちと重なって見えました。常に背中合わせにしている「私が倒れたらどうなるんだろう…」という不安が、現実として目の前に映し出されているのです。上映中は胸にこみあげてくるような感覚が繰り返し、何度も歯を食いしばったり、息を止めてしまいました。
「制度がない」「支援できる人がいない」「家族が何とかするしかない」。重い障害のある子どもたちが成長していく中で、何度も何度も家族に突きつけられてくる言葉です。そうした言葉や現実に出会う度、「家族はいつまで、どこまでがんばればいいの?」「家族に何かあったら、どうなるの?」「この子はひとりの人として、家族任せではない、この子自身が望む人生を送ることはできないの?」と、家族はうちひしがれます。
そのような経験を重ねていくうちに、いつしか「こんなもんかな…」「この子が本当にここに行きたいかは分からないけど、行けるところはここしかないから、しょうがないかな…」と諦めに似た思いを抱いてしまいがちです。
しかし、映画では厳しい現実と同時に、そうした現実の中で、諦めることなく、よりよいあり方を探す多くの人たちの姿を描いていました。本人の望みはなんであるのか、どういう暮らしがいいのかということを、その人とともに生きる人、暮らしに関わる人、そうした人々がその人とともに考え、実践していく姿です。
本人のためだけではなく、本人抜きでもない。その人を含めたまわりの人々が、今ある枠の中に限定されることなく、どう暮らしたいかを考えて、暮らしを形づくっていく。実際にそれを実践している多くの人の姿を見て、「今ある形にあわせなくてもいいんだ!」と衝撃を受けました。もちろんそれは簡単なことではないけれど、「親や家族だけでがんばることではなく、まわりとともに作りあげていけばいいんだ」とも思えました。
直面するのがつらいことも、答えの出ないことも、映画には描かれていました。映画を観た後は、言葉にうまくできない思いもいっぱい感じて、整理がつきません。ただ、強く感じたのは、「諦めなくてもいい」「いまある枠の中だけで考えなくてもいい」ということでした。
フリートークの登壇者はそれぞれの立場から、映画を観た感想をおっしゃっていました。
杉並区重症心身障害児通所施設わかば、成人後の通所施設であるシャローム上井草さくらの施設長である望月太敦さん。きょうだい児と家族の応援団 にじいろもびーる 代表の有馬桃子さん。医療的ケアの必要なお子さんがいらっしゃる保護者の方お二人もご登壇くださいました。おひとりはNPO法人なかのドリーム理事・福満美穂子さん。もうおひとりは、子ども、障害児者、高齢者へのアートワークショップなども開催しているイラストレーターである宮田敦子さん。そして、本作の監督である貞末麻哉子さん。
皆さんのコメントからは、支える側として、保護者として、難しいことがあっても、諦めることなく、よりよいあり方を模索していらっしゃるご様子がうかがえました。また、監督からは本作の撮影時のお話などをうかがうこともできました。
現実のたいへんさに直面しながら、悩みつつも、手探りで進んでいらっしゃる皆さんのお話をうかがうと、「同じように感じている人も、支えてくれる人も、たくさんいるんだ」と感じ、とても勇気づけられました。
今回の上映会では、多くのボランティアの皆さまにご協力いただきました。日頃からみかんぐみイベントに参加して下さっているボランティアさん14名、立正短期大学の前嶋先生と学生さん13名。皆さま、会場の消毒から設営、受付、席案内、撤収作業など、朝早くから午後までご尽力下さいました。ありがとうございました。支えてくださるボランティアの皆さまとご一緒に、この映画を観ることができたのも、とても嬉しかったです!
そして、このような素晴しい映画を製作して下さった、貞末監督はじめ、マザーバードの梨木プロデューサー、本当にありがとうございました! 何度でも観たい映画です。
2件のコメント
ただいまコメントは受け付けていません。