「ともに支え、ともに笑う~ピアサポートの力とこれから~」2025年10月(第2回 ピアサポートネットワーク シンポジウム開催)


みかんぐみでは、年に6回のピア交流会(通称:ピアカフェマーマレード)の他、ピアサポート立ち上げ支援を全国各地で行っており、ピア活動が各地に広がり着実に根付いてきていることを感じております。2024年11月には、各地域を結ぶ「医療的ケア児・重症心身障害児ピアサポートネットワーク」を発足させました。隔月で開催されるオンライン定例会では、各地のピア活動の報告や相談を行い(運営者同士のピア交流会)、大きな収穫につながっています。今年3月には、第1回のシンポジウムを開催し、各地での取り組みを広く知っていただく機会を得ました。

こうした活動を通じて、ピア活動の素晴らしさ(光の部分)の共感が盛り上がってきている一方で、マンパワーの育成や安定した資金源の確保などの課題(影の部分)も共通点として浮かび上がってきています。

2025年10月下旬、現地参加とオンラインのハイブリッドにて、全国各地の当事者団体や行政・支援者の皆様を繋いでシンポジウムを開催致しました。

ゲストによるピア活動に関する話題提供、各地家族会でのピア事業の共有からなる第1部と、会場全体でのディスカッションによる第2部の3時間。当日の様子をダイジェストでお届けします。

はじめに、みかんぐみの会員で、ピアカフェマーマレードのスタッフとして活動をしている大信田より、挨拶とシンポジウム開催に至ったみかんぐみの思いを伝えました。

医療的ケア児(以下:医ケア児)や重症心身障害児(以下:重心児)等の当事者や家族の支援には、多方面からの総合的なエンパワメントが不可欠であり、ピア活動はその中の一つとして確実に定着してきてはいますが、その光と影の部分について、話題提供や実践報告をいただきながら共有しあい、デスカッションでアイデアや思いを出し合えることを期待し、願いとして伝えました。

第1部では、医ケア児等の家族の支援に従事されている行政・支援者のお二方からの話題提供と、全国各地の当事者団体からの活動の事例をご報告いただきました。

ゲストによる話題提供

今回のシンポジウムにおける大きな特徴の一つに、行政や支援をされる立場の方から、深い思いや主体的な意思表明をいただくことができた点です。これまで、「誰も取りこぼさない」ために強い思いや願いをもって活動してきた当事者団体にとって、行政・支援者と協働していくことはどうしても欠かすことのできない事として願ってきました。両者との協働を実現するために地道な努力や試行錯誤を重ね、諦めないモチベーションを保ち続けている最中に、こうした場を持つことが出来たことは、未来に向けた大きな進歩だと感じています。

小林氏からは、「ピアは当事者の本音が聞ける貴重な場。ここから具体的な支援に繋ぐ橋渡しをしたい。行政とピアが信頼で繋がることで地域の支援が育つ」という心強いメッセージをいただきました。
小竹氏は「ピアは辛さを共有するだけではなく、『一緒に生きていく力』そのもの」と温かく寄り添う言葉でエールを贈ってくださいました。

ゲストからの話題提供を受けて自分たちが行っているピア活動の力、光の部分を改めて客観的に捉えることができ、体の内部からじんわり熱くなってくるのを感じました。

会場の雰囲気が温まってきたところで、各当事者団体からの事例報告が始まりました。

何もないゼロからスタートし、人や支援機関との繋がりを大切にしながら数年をかけて、県という大きな行政から信頼を得たというエピソードには、新しい道標を得ることができたと感じました。どの団体もピア活動の基本を大切にしながらも、独自の工夫や試行錯誤を重ね、一つひとつ実績を積み上げていらっしゃいました。日々直面しているピア活動の課題に対して、それぞれの団体の努力は、ピアサポート交流会に参加した方々からの声の力に支えられており、迷ったり失敗したりしながらも、「なんとかしなくては。」という切実な思いと、参加者からの声を原動力に、前へ進もうという意思がどの団体からも感じられました。

各地の団体の活動を参考やきっかけとして、他地域でもピア活動の輪が広がることを期待します。

また、別の「境目を無くす」意味として、「行政と当事者間の垣根を越える」というテーマもありました。様々な立場の方々が参加者のエンパワメントを目的に繋がり合い、ざっくばらんに思いを伝え合うこと。それぞれの役割を明確にした上で、座談会等で本音が言い合える関係性の構築は可能であることを共有し合いました。

オンラインと現地、登壇者集合のディスカッションタイム(第2部)

第2部はディスカッションです。
ファシリテーションをみかんぐみ村林が務め、ピアサポートの光と影、それぞれについて対話をし深掘り。話題となったことの一つに「境界線を超える」「境目を無くすという」というような内容がありました。医療的ケア児等支援法ができたことで、医ケアの無いスペシャルニーズの家族が、制度のはざまからこぼれ落ちている現状があり、境目を曖昧にしていく必要性が語られました。ピアの場の安心と安全を保障する意味では、参加者の属性を限定する必要があることを確認しつつ、支援が届きにくい対象者を繋ぐ重要性についても認識を新たにしました。

また、ピアサポートそのものの持つ力についても深掘りしていき、改めてその魅力と課題(会の継続やマンパワーの確保等)について語り合いました。「一人の安心が、次の誰かの希望になる」「参加者が『自分の発信が誰かの役に立っているかも知れない』と感じることができれば、次の新たなピアスタッフが生まれることに繋がる」等、影を光に変える提言が多くあったことが印象的なディスカッションでした。

質疑応答では、第1部から続く「誰も取りこぼさないために」という登壇者の強い意思のトーンの中において、会場全体で本音でのやりとりが繰り広げられました。福岡で起きた過去の辛い事件(7歳の子どもの人工呼吸器を母親が外し、死亡させた)を元に、孤立を防ぐことの重要性とピア活動の可能性やあり方について掘り下げました。在宅移行期という極めてデリケートな時期のピア活動の必要性は当然のことながら、数年後に突然エアポケットのような負の感情に落ちてしまうケースも少なくないことから、そばの人が気付くこと、支援者はSOSをキャッチしていくことの重要性も語られました。

当事者家族でもあり支援者でもある方からの「突然負の感情をもってしまうことは誰にでもある。それは決して悪いことではない。」という強いメッセージは当事者家族たちの胸の深い部分、普段蓋をしている部分にも浸透し、会場に共鳴の波が起こりました。ピア活動の場での「わかります。」のひと言が、誰かの命や心を救うことがあるということを、改めて実感したところです。

「誰もとりこぼさない」ための策の一つとして、主要な医療機関の退院時の地域連携室や県全体の医療的ケア児等コーディネーターに挨拶に回り、ピア活動を周知していくことがあげられました。また、「在宅移行期等の他(多)職種連携の中にピアサポーターという職種があるといい」という支援者からの言葉があり、それに対する共感の声があがっていました。初期の段階でピアの存在自体をまず知っていただくことがとても大切です。母子保健の領域や訪問看護から外れた場合など、孤立して埋もれてしまうケースもあるので、初期対応の重要性について今後さらに力を注ぐ必要性について確認しあいました。

登壇者からの最後のひと言として「ピアスタッフには、自分と自分の家族を最優先にしてほしい。細く長く続けていくことが、未来へのバトンタッチに繋がる。」とのメッセージをいただき、この先の希望に繋がる明るい見通しをもつことができました。

3時間に渡るシンポジウムは、行政、支援者、当事者家族の垣根を越えた対話によって、一つの大きな空気のかたまりに包まれていました。

多方面からの総合的なエンパワメントによって、影は光に変わっていく。
ピア活動の深掘りをした時間は、想定を大きく超える可能性の宝庫のように感じました。

最後に、会場をご提供いただきました高千穂大学様ありがとうございました。とてもきれいな会議室と設備で、シンポジウムが滞りなく開催できましたこと改めて御礼申し上げます。

登壇者の皆様&スタッフ一同で

※本事業は、令和7年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業の助成を受けて活動しています。